SSブログ

手間ひまをかけてシンプルにする [読書]

スティーブ・ジョブズ 夢と命のメッセージ (知的生きかた文庫)

スティーブ・ジョブズ 夢と命のメッセージ (知的生きかた文庫)

  • 作者:
  • 出版社/メーカー: 三笠書房
  • 発売日: 2011/11/08
  • メディア: 文庫






ジョブズを評して「何も作らなかったが、すべてを作った男」という人がいる。この人は、確かに不思議な人で、技術者でもデザイナーでもない。編集者とか映画監督ととも違う。天才は天才だろうが、レオナルド・ダ・ヴィンチのような万能の天才という訳でもない。
世の中のプロデューサーという職種が一番近いのだろうか?彼の伝記を読んでも、いったい具体的にどういう仕事ぶりだったのかが想像つかない。他人に与える影響が半端ない、というのは確かで、彼のプロデュースのもとに出来上がった製品が飛び抜けて素晴らしいというのも確か。彼がやってきた仕事は他の誰も真似できない、というのも確かだ。
彼がいなかったらAppleも, Macも、iPodも、iPhoneもiPadもなかった。コンピューター業界も、音楽業界も、電話業界も、出版業界もここまで変わることがなかった。スケールが大きすぎて、いわゆる一般的な仕事という枠に収まらない。
とはいえ、彼が一貫してやってきたのは「ものづくり」だ。彼の言葉でいうと「独創的な製品を生み出して世界を変える。」ことや、「テクノロジーとヒューマニティの橋渡しをする。」こと。

ところで、僕自身名言集はあまり読まないが、気晴らしに買った「スティーブ・ジョブズ 夢と命のメッセージ (知的生きかた文庫)」に、とても印象に残る彼の言葉があった。
彼の「ものづくり」に対する姿勢が良く分かる。

何か問題を解こうとしたときに、最初に浮かんでくるのは複雑な答えだ。ほとんどの人はそこで止まってしまう。でも、粘って問題のことを考え続けていると、タマネギの皮がどんどん剥けてきて、エレガントでシンプルな答えにたどり着くことが多いんだ。たいていの人は、そこに至るまでの時間と労力をかけない。

集中(フォーカス)というと、対象をみつけて「イエス(これだ)」ということだとみんな思っている。でも、それは全然違う。他の100件のいいアイディアにノーというのが、「フォーカスする」ということだ。しっかり吟味しないといけない。

特に後者は印象深い。
日本の家電製品はガラパゴス化と言われるほど、実に様々なバリエーションを作っている。消費者に選択の幅を与えていると言えば聞こえはいいが、逆に言えば、作り手が本当に時間をかけて吟味して、本当に良いものとは何かを徹底して考えていないだけだ。
アップルは例えばスマホはiPhoneの一種類だけだし、全体の製品のバリエーションがとても少ない。人によっては「アップルって着想とデザインがいいだけで、製品開発のコストをかけてないよね。」と思ってるかもしれない。
しかし、それは大きな勘違いだ。というのがこのジョブズの言葉で判る。
100のアイディアがあると100出すのが普通の企業だとすると、アップルは同等のアイディアを出し、それらをすべて吟味した上で、たったひとつの最も優れたものに絞っている。どちらが手間ひま、時間とコストをかけていると言えるだろうか。
毎年毎年、使うかどうかも判らない思いつきのような機能を節操なく盛り込んで「さあ選んでください!」というものづくりの姿勢が、今日の家電業界の凋落を招いていると、僕などは思えてならない。本気で製品を愛し情熱を傾けて作っているなら、覚えきれないほどのバリエーションを作る体力があるはずがない。
まあ、アップルもジョブズという強力で希有な才能をもった人がトップのワンマン体制だったから、できていたのかもしれないけど。いちユーザとしては、今後もエレガントでシンプルな製品が出てくれるのを望むばかりだ。


nice!(0)  コメント(0)  トラックバック(0) 
共通テーマ:趣味・カルチャー

nice! 0

コメント 0

コメントを書く

お名前:
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

トラックバック 0

この広告は前回の更新から一定期間経過したブログに表示されています。更新すると自動で解除されます。