自分探しの技術 [読書]
最近読んだ本「文章表現400字からのレッスン」(梅田卓夫)の中で、次の一説が目にとまった。
梅田卓夫さんは、文章表現において<断片>の重要性について説いている。
一冊の本を読み終えたとき、本文中のささいな叙述が妙にこころに残っていることがある。<中略>
いま目の前にある小さなかけらとあなたのこころが交信している。
日々の生活の中で、例えば公園で拾った鳥の羽をじーっと見てしまうとか、あるいは
長編小説の枝葉の部分なのに、なぜか気に入って繰り返し読んでしまう一節があったりとか。
断片はディテールそのものであり、また「部分」であるがために、その外側に対して
想像する余地をあたえる。だから魅入られると梅田卓夫さんは述べている。
一方で、同じような指摘が「古典力」(斉藤孝)に出てくる。
これは古典を読むコツとして、全体ではなく<断片>を読むことに着目した章で、
内田義彦「社会認識の歩み」の言葉を引用している。
全体の筋に気を取られるよりも、その中のどれか一句でもいいから、とにかく自分と出会うというか、自分に突き刺さってくる章句をまず自分で発見すること。これが一番肝要です。
つきるところ「自分の眼と感性を信じて言葉と出会う。突き刺さってきた言葉を手がかりに自分を掘り起こす」ために、古典の断片読みを大いにすべしと斉藤さんは述べている。
毛色は変わるが、「文章表現」の梅田さんとは別人の、梅田望夫さんの「ウェブ時代をゆく」の中で、
より具体的に、自分の指向性(何が好きか、何に向いているか)を探すツールとして、「ロールモデル思考法」について述べている。ロールモデルとはお手本のこと。具体的な方法とは、
人生のありとあらゆる局面に関するたくさんの情報の中から、自分の波長と合うロールモデルを丁寧に収集すること。
<中略>
「ある対象に惹かれた」という直感にこだわり、なぜ自分がその対象に惹かれたのかを考え続ける。
それを繰り返していくと、たくさんのロールモデルを発見することが、すなわち自分を見つけることなのだとだんだんわかってくる。と、さらに、
人や本やニュースなどの情報との出会いの中で感じる「面白かった」という直感こそが、ロールモデル思考の発端である「自分と波長の合う信号を探す」ことに他ならない。
と述べている。
僕は梅田望夫さんのこの「自分と波長の合う信号を探す」という表現が好きである。
冒頭に引用した梅田卓夫さんが述べている「目の前にある小さなかけらと交信する」と言わんとしていることは一緒だ。
素直に自分がいいと思ったものを集める。そして断片でいい。
こいつはシンプルだがある意味究極奥義とも言えるな、と思った。
- 作者: 齋藤 孝
- 出版社/メーカー: 岩波書店
- 発売日: 2012/10/20
- メディア: 新書
ウェブ時代をゆく ─いかに働き、いかに学ぶか (ちくま新書)
- 作者: 梅田 望夫
- 出版社/メーカー: 筑摩書房
- 発売日: 2007/11/06
- メディア: 新書
2013-12-08 11:05
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