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自分探しの技術 [読書]

最近読んだ本「文章表現400字からのレッスン」(梅田卓夫)の中で、次の一説が目にとまった。
梅田卓夫さんは、文章表現において<断片>の重要性について説いている。

 一冊の本を読み終えたとき、本文中のささいな叙述が妙にこころに残っていることがある。<中略>
 いま目の前にある小さなかけらとあなたのこころが交信している。

日々の生活の中で、例えば公園で拾った鳥の羽をじーっと見てしまうとか、あるいは
長編小説の枝葉の部分なのに、なぜか気に入って繰り返し読んでしまう一節があったりとか。

断片はディテールそのものであり、また「部分」であるがために、その外側に対して
想像する余地をあたえる。だから魅入られると梅田卓夫さんは述べている。

一方で、同じような指摘が「古典力」(斉藤孝)に出てくる。
これは古典を読むコツとして、全体ではなく<断片>を読むことに着目した章で、
内田義彦「社会認識の歩み」の言葉を引用している。

 全体の筋に気を取られるよりも、その中のどれか一句でもいいから、とにかく自分と出会うというか、自分に突き刺さってくる章句をまず自分で発見すること。これが一番肝要です。

つきるところ「自分の眼と感性を信じて言葉と出会う。突き刺さってきた言葉を手がかりに自分を掘り起こす」ために、古典の断片読みを大いにすべしと斉藤さんは述べている。

毛色は変わるが、「文章表現」の梅田さんとは別人の、梅田望夫さんの「ウェブ時代をゆく」の中で、
より具体的に、自分の指向性(何が好きか、何に向いているか)を探すツールとして、「ロールモデル思考法」について述べている。ロールモデルとはお手本のこと。具体的な方法とは、
 
 人生のありとあらゆる局面に関するたくさんの情報の中から、自分の波長と合うロールモデルを丁寧に収集すること。
 <中略>
 「ある対象に惹かれた」という直感にこだわり、なぜ自分がその対象に惹かれたのかを考え続ける。

それを繰り返していくと、たくさんのロールモデルを発見することが、すなわち自分を見つけることなのだとだんだんわかってくる。と、さらに、

  人や本やニュースなどの情報との出会いの中で感じる「面白かった」という直感こそが、ロールモデル思考の発端である「自分と波長の合う信号を探す」ことに他ならない。

と述べている。

僕は梅田望夫さんのこの「自分と波長の合う信号を探す」という表現が好きである。
冒頭に引用した梅田卓夫さんが述べている「目の前にある小さなかけらと交信する」と言わんとしていることは一緒だ。

素直に自分がいいと思ったものを集める。そして断片でいい。
こいつはシンプルだがある意味究極奥義とも言えるな、と思った。

文章表現400字からのレッスン (ちくま学芸文庫)

文章表現400字からのレッスン (ちくま学芸文庫)

  • 作者: 梅田 卓夫
  • 出版社/メーカー: 筑摩書房
  • 発売日: 2001/02
  • メディア: 文庫
古典力 (岩波新書)

古典力 (岩波新書)

  • 作者: 齋藤 孝
  • 出版社/メーカー: 岩波書店
  • 発売日: 2012/10/20
  • メディア: 新書





ウェブ時代をゆく ─いかに働き、いかに学ぶか (ちくま新書)

ウェブ時代をゆく ─いかに働き、いかに学ぶか (ちくま新書)

  • 作者: 梅田 望夫
  • 出版社/メーカー: 筑摩書房
  • 発売日: 2007/11/06
  • メディア: 新書

モチベーション、チーム作り、ノート術: 今週気になった記事 [ビジネス]

今週はモチベーションに関係する記事がけっこう目に留まったなあ。
今の自分が欲してる情報だからか、、、(苦笑)。

■熱い魂がなければ、ハーバード生にあらず?
忘れかけた夢を取り戻す方法

HBSには熱い人たちが集まっているな。と。
著者の友人たちのエピソードがものすごく具体的なのは、お互い夢を語り合ったからなのだろう。と想像できる。
壮大な夢も理解し合える仲間がいれば心強い。

■【第1回】自信をつけるのに、モチベーションは100%必要ない!

なかなか面白い記事。仕事を達成するのにモチベーションは必要かどうか、という話。
業務のお尻が決まっていればむしろ気持ちは向きやすい。期日に間に合わせてやるだけだ。
ただ、その仕事に対して意欲高くこなせるかどうかは別。と思う。
仕事の方向性に納得がいかないまま働くのはやはり意欲は低い。
この記事の話だと、上司からの指示された目標に「あたりまえ」ととらえるべきとあるが、
むしろ、ドラッカーが言っていた「目標は実行する者自身が決めるようしむける」方がいい気がする。

■どんな仕事にも「やりがい」を見出すことは、可能なのか

シンプルだが良記事。多くの自己啓発本で言われている、仕事の意義への認識が
モチベーションに影響を与える例を述べている。
チップ・コンリーのホテルの従業員の話、看護師の話、奨学金募集の担当要員の話。
その仕事の価値をダイレクトに認識できることが、仕事のやる気につなげる最良の方法。

■最強にクリエイティブなチームを作るのに必要な「5人の存在」

実際に役に立つかどうかは不明だが、単純に面白い。
性格分析によるチーム作りは、アメリカのビジネス界では結構前からありそう。
いろんな自己啓発本って要は自分の指向性、価値観を明確にするためのツールだし。
ティナ・シーリングの「スタンフォード白熱教室」でも講義の中に出てた。

こういう話をどう受け止るかは、働く場において人間を人間としてとらえるかどうか、
が重要なファクターだと思う。
ブラック企業が顕著な例だが、世の中の働き手を道具としか思ってないマネジメントとかは
こういう性格診断的なのはそもそも見ないかもね。

■ビジネスを成功へと導く「チーム術」?『ザ・チーム 日本の一番大きな問題を解く』を読んで

こちらもチーム作りの話。なかなか面白そうな本だ。
結局腹を割って話し合えるか、お互いどれくらい知っているかが、普段の業務のモチベーションにも影響する。ということでしょうね。

■50万人が支持したノート術「ノート1冊方式」が一番使える3つの理由

毎日読書をしていて、やはり課題に思っているのは、読んだ後に学んだことをどう残すか。
ノート一冊にまとめる、というのはシンプルで良さそう。
ただノートは弱点があって、外にいるときはなかなか使えない。思いついたらメモはやっぱ今はケータイかな。
そこらへんをどうカバーしているのかしてないのか著書を読んでみたい。

■来夏公開 『るろうに剣心』続編新ビジュアルが公開

るろうに剣心の続編か。この前TV放送を観たが、面白かった。
新参者に伊勢谷友介と田中泯か。すごい二人が加わったな。
NHK「竜馬伝」のこの二人の存在感は、あきらかに突出していた。期待大!


起業、ベンチャー、経営: 今週気になった記事 [ビジネス]

まずは、テラモーターズ徳重社長の記事。読んでて非常に面白かった。
この人は確かNHKのドキュメント番組「メイド・イン・ジャパン」で新進気鋭のベンチャー企業として活動を紹介されていた気がする。

■日本の”頭がいい人”に、一番足りないもの
テラモーターズ徳重社長、イノベーションを語る(上)

アジア市場に日本の大手メーカはまったく目をむかない。という話。
日本の大企業にとって売り上げという面ではあまりメリットがないからだろうか。
しかし成長しているエネルギーのある国でチャレンジングなことをするのは
会社自体の元気になるだろうな、と思う。
とはいえ日本のベンチャー企業も実のところアジアに目を向けているのはどれくらいいるのか?
みなシリコンバレーに目を向けている気がする。

■今の日本の経営者は、しょうもなさすぎる
テラモーターズ徳重社長、イノベーションを語る(中)

この記事でインドの話も出てくるが、これを読んで思い出したのは、
仕事でインドに行ったときに感じた、新興国のバイタリティ、活動エネルギーだ。
成長まったたなかの国は失敗を恐れない。
日本は豊かすぎて平和すぎるので、活動のエネルギーレベルも低いのかもしれない。
日本も明治、戦後の時代は大きな人物がいた。活動のスケールが違ったという。
そう考えると、実は何もない環境(社会)の方がはるかに自分らしく
自由に生き生きと仕事できるのではないかと思い始めた。

■働く女性が増えれば、男はもっと冒険できる
テラモーターズ徳重社長、イノベーションを語る(下)

ベンチャー立ち上げ時の人集めの話は面白い。結局、まずは自分自身ということか。
一人で仕事を始めて、ビジョンをシェアしていく過程で賛同者が出てくる。

やりたいこと、わくわくすることを持つべき、という持論は
色んな経営者の本や、ビジネス書で言っているが、
実際に現役バリバリ最前線の経営者の口から言われると、やはり説得力がある。
また、起業家は情熱を頼りに物事を進めているんだなと、いろんな例を思い出すに強く感じる。

■富士フイルムはなぜ、大改革に成功したのか
古森重隆・富士フイルムホールディングス会長・CEOに聞く

確かに、富士フィルムはコダックと違って、うまく事業の転換を行えているイメージがある。
フィルム技術を医療に流用したり、カメラのデジタル化にもうまく対応している。
これがこの古森さんの手腕によるものらしい。一回著書を読みでみたい。

■ビズ・ストーン:Twitterを生み出した3つの間違いとは?

なんかタイトルがあさっての方向だが、起業家が成功するまでの道のりを描いてて面白い。
他の起業家も思い返すに、この人たちの共通点って、
ものすごく自分の感性に素直だということ。
つまらなくなったらさっさとやめて、新しいことを立ち上げるのをまったく躊躇しない。

■「戦力外社員こそ奇跡のWebサービスを作る」ドワンゴ川上量生氏が語る、未来のネット企業のあり方

ドワンゴ、ニコニコ動画、どれも使ったことがないが、フットワークの軽そうなIT企業ではある。
こういうライトなビジネスの方は語ることが柔軟性があって合理的。
スタジオジブリの話が面白かった。
アニメーターは分業制度だが、自分の担当内なら創造性を発揮する裁量をもらえる話。
それを作業の細分化が進んでいるITアプリの開発に生かせないか、ということだが、一方でゲーム業界はどうなのだろう。ゲーム業界は結構こなれている感じをうけるが、プログラマーは創造性を発揮する余地はあるのだろうか、ないのだろうか。

■写真: Hot pool,Bolivia (Dan Wood)

なにげに気晴らしにFlickrで写真を観る。たまたま見つけたすばらしい一枚。
シルエットはいろいろイマジネーションを生む。
ものすごくタイムスリップして太古の(まだ石器時代の)人たち
もこんなんして集まってたかなと想像させられる。


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アマゾン、スタートアップ、モチベーション: 今週気になった記事 [ビジネス]

今週ネットの記事を拾い読みして面白かったものをピックアップ。

■「OS X無料化」が意味する新時代

MSの未来を暗示する良記事。
これまでMSはOSのライセンス料で利益を得てきた。とはいえ、近年収入源の25%に落ち込んでいたとは知らなかった。
PCにデフォルトでインストールされているから、一般ユーザはOSの価格を気にする必要はない。
確かにそうだ。OSの更新=HWの更新。
だから垂直統合型のビジネスの方が融通が効く。アップルは両方とも持っている。最強だ。

■アマゾンの記事
アップルのジョブズ亡き後、今一番面白いビジネスパーソンはベゾスかもしれない。
利益をかせぐのは二の次かのように、どんどん新しい展開をする。どれも面白い。

 なぜ今、アマゾンは新規事業を連発しているのか? 「インフラを握る」ことの強さ【連載:中島聡】 
 なぜアマゾンはKindle専用の週刊文学誌を創刊するのか?


■羽生善治さんが考える「集中力の基盤」とは? (1/2)

将棋をすれば集中力が磨かれる話。継続して情熱を保つ秘訣が書かれてある。
簡単いえば、小さな成功体験をたくさん積むこと。上達の実感を味わえる仕組みということか。
丁度良い高さのハードルを越えたときに味わうフロー理論を思い出す。

■ハーバードの名物授業が“世代交代”する?
エリートたちに義務化された“スタートアップ実習”

この記事はかなり興味深かった。HBSで、起業そのものを実習で行うことが必須科目という話。
読んでみると、大学や大学院に求められる理想の教育の姿がそこにあった。
とはいえアメリカですら2011年にできた実習だというから結構最近だ。
起業家精神がこういう風土で育まれる。
アメリカは強い。今後もイノベーションを起こし続けるな。

この記事を書いた人もそうとう優秀そう。
しかし思うに、世の中の優秀は人は、(就職できずに稼げない考えないだろうから)自由に生きるなあ。
その分努力してるかもしれないが。

■「社員のやる気が世界最低」の元凶とは? 日本企業を襲うモチベーションの罠

会社の方向性と社員の価値観(VALUE)がズレてきているということ。
成熟社会では価値観は一様ではなくなっているという話。
大事なのは自分の価値観をはっきりと認識することでしょうね。



会社は大きければいいってもんじゃない [ビジネス]

ホウレンソウ禁止で1日7時間15分しか働かないから仕事が面白くなる

ホウレンソウ禁止で1日7時間15分しか働かないから仕事が面白くなる

  • 作者: 山田 昭男
  • 出版社/メーカー: 東洋経済新報社
  • 発売日: 2012/08/10
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)






読んだ後で自分自身の視野が確実広がった。読んでよかった。

世の中には社員第一を謳う会社はあっても実態は良く分からない。
だいだいどの会社も口先は人材が一番大事だと言う。

しかし、未来工業の場合は、この山田さんの本を読んで「ほんものだ」と感じた。
言っていることすべてが合理的で経験に裏打ちされていて具体性がある。
社員第一の経営理念でも利益を出せる会社の仕組みがしっかりとある。
ほんとうによく考えている。

一方、他の会社が一昼夜で真似できることではない。のも確か。
未来工業とて最初から「残業禁止」「ホウレンソウ禁止」「日本一休日が多い」訳ではなかった。というし。

まず、バックボーンとなるユニークで競争力の強い製品があるということ、
そして会社のコアバリューとなる「常に考える」企業文化が、
長年の歴史の積み重ねで風土として定着していること。
さまざまな具体的な試行錯誤があって現場でしか持ちえない知見も経営を支えていると思う。

とはいえ、日本にこういう会社が存在すること自体、大きく勇気づけられる。
日本は中小企業の宝庫かも知れない。
カンブリア宮殿を観ても、「日本でいちばん大切にしたい会社」を読んでも、
世の中まだまだ捨てたものじゃないな、とほっとする。
特に昨今は、ブラック企業が話題をさらって、世知辛い風潮にだれしもが閉塞感を口にする中では。

いま、37 signalsというアメリカの小さなIT企業のCEOが書いた「Rework」を読んでいる途中だが、
この本の書いてあることも面白い。未来工業のスタイルと同じ匂いがする。

中小企業というと「弱者」のイメージがあったが、改めなければならないな。と思った。
会社は大きくすればいいってもんじゃない。という考え方もある。のは新鮮な驚きだ。
あえて大きくしない。
こういう発想は日本、アメリカ両方に存在する、というのも面白い。

まだまだ面白い会社は存在する。もっと知りたい。

ものづくりの極意 [読書]

自分の仕事をつくる (ちくま文庫)

自分の仕事をつくる (ちくま文庫)

  • 作者: 西村 佳哲
  • 出版社/メーカー: 筑摩書房
  • 発売日: 2009/02
  • メディア: 文庫






この本は自分にとっての名著です。書き込みしまくり、ふせん貼りまくりです。
自称「働き方研究家」の著者が、さまざまな仕事場を訪れ、仕事の哲学を伺う。
まるでNHK「プロフェッショナルの流儀」の個人制作版みたいな。

やっぱ、仕事の話は面白い。
名言はたくさんあるし、示唆に富んでいるし、考えさせられる(インスパイヤ)されるところたくさんある。

例えば、以下の一文

 『つくる力は「観察力」にしたがう』

モノを作る力量は、細部の違いにどれだけ気づけるか、その人自身が持っている観察の精度に依存するということ。
制作スキルは熟練度によって高められるかもしれないが、
そもそもその人に高いレベルの気づきがないと、作品の質もそこまでしか到達しない、ということ。
絵画を鑑賞する目、音楽を鑑賞する耳。に限らず、世の中に出ているすべての製品に当てはまる。

これはもう作り手のセンスとしか言いようがない。
(とはいえ、センスは磨ける。ゲーテのいうように、超一流にたくさん触れれば。)

あと、創造と制作のプロセスは、IDEOのシニアエンジニアの以下の一言がすべてを表していると思う。

 『小さな失敗をできるだけ多く、具体的に重ねること』

良いデザインを生むためのハウツーは、地道な作業だった。
デザインは、ジョブズの言葉を借りれば、単に見た目ではなく、どのように機能させるかを設計すること。
道具だったらそれが本質的にどういうものか、どのように使うか、を徹底的に考える。
ここでいう考えることは、会議室とか頭の中で行われるのではなく、実際にモノを試作しては失敗を繰り返す具体的な作業。

以前テレビで観た佐藤可士和の仕事風景や、この本で出てくる柳宗理の仕事のスタイルにも共通している。
超一流の人たちは、手間ひまを惜しまない。
良いものを創造するのに近道はない。ましてや効率よくなんてできない。

どれだけ試行錯誤、失敗を積み重ねるかが、洗練された美しい完成品を生むためのの唯一の極意だ。
ということを改めて強くこころに刻んだ。


Web時代の新しい働き方 [読書]

ウェブ時代をゆく ─いかに働き、いかに学ぶか (ちくま新書)

ウェブ時代をゆく ─いかに働き、いかに学ぶか (ちくま新書)

  • 作者: 梅田 望夫
  • 出版社/メーカー: 筑摩書房
  • 発売日: 2007/11/06
  • メディア: 新書

梅田望夫「Web時代をゆく」を読む。面白い。思考がよく練られていて、「自分の仕事をつくる」に匹敵する豊潤な内容。
Linus、まつもとゆきひろという実例を知ってはいたが、オープンソース・フロンティアの雰囲気をもっとよく知りたい、そう思って読んだが、かなりの当たり本。
この本に提示されたこれからの時代の働き方の可能性にワクワクする。
個がグローバルに直接繋がる時代では、突出した技能がより重要になる。「好き」を極めることとそれを継続する勤勉性。「好き」が食っていける仕事に繋がるチャンスがネットによって大きく開かれたということ。
何かを始めるリスクがかなり小さくなった一方、完成されたシステムがないから成功するまで試行錯誤はある。
誰にも始められホットになれる。高校生が突然億万長者になる時代だ。(この前アメリカの高校生の作ったWebサービスが米Yahoo に買収されたのは記憶に新しい)
趣味で始めたものがスモールビジネスあるいはコミュニティになる。Webの世界は場所の垣根を越えて成り立つダイナミズムがある。
TEDにも「秘密を集めるサイト」「小さな幸せを集めるサイト」など実例がいくつもある。さらに言えばTEDそのものが良い実例だ。
内容をフリーで公開したことで大きな影響力を持った。
Web上のプロジェクトの成功のポイントは継続してそのことに労力をさく意欲があるかどうか。そのコミュニティリーダーの献身的な貢献が必要。「没頭」し続ける力。
この本は自分の志向性を見つける梅田さん自身の手法も公開されていてかなり勉強になった。
ワクワクする「ロールモデル」の働き方の中の何の信号に自分が反応したのかを探ること。生きるために水を飲むように読書する。ローモデルを集める。など。
これからの時代は若者にチャンスがあるのはもちろんだが、年齢の垣根は意味がないと思われる。
むしろ年輩の人の方が「コンテンツ」を持っている。
いわば市井に蓄積された技能、知識、思想。「シニアが活躍する場をつくる」といった仕組みが実はもっとホットになるかもしれない。
この前「クローズアップ現代」で放映されたが、今やクラウドソーシングの時代に突入した。想像以上に時代の進み方が速い。

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走ること〜熱い魂の物語〜 [読書]

BORN TO RUN 走るために生まれた~ウルトラランナーVS人類最強の”走る民族”

BORN TO RUN 走るために生まれた~ウルトラランナーVS人類最強の”走る民族”

  • 作者: クリストファー・マクドゥーガル
  • 出版社/メーカー: 日本放送出版協会
  • 発売日: 2010/02/23
  • メディア: ハードカバー

 

 

この本は普通の三倍の密度がある。

比喩ではなく、訳者あとがきにも書かれているが、この本は3つのストーリをひとつに融合させたものだ。

 

ひとつは、足を痛めた冴えないランナーである著者が、メキシコの伝説的な走る民族タラウマラ族の秘密に触れ、ランナーとして再生する物語。もうひとつは、走るという行為に対する探求から、人類の進化の秘密に迫る科学ノンフィクション。そして、3つめは世界有数のウルトラランナー達とタラウマラ族との、魂の奥から熱くなるようなランニングバトルのドキュメンタリー。

 

この3つが絶妙にからみあって、読む者をぐいぐいと引き込んでゆく。

 

この本の中に出てくるウルトラランナーのそれぞれが持っている人生もこの上なく面白い。

「走る」という単純な行為が、こうまで魅力的な物語になるものなのか。

不思議だが、ほんとうに自分自身の奥底に眠る原始的な何かを揺さぶられる。

 

この中に出てくるランナーの物語で、一番好きなのはアン・トレイソンだ。

大好きな一節を引用したい。

 

アン・トレイソン。カルフォルニア州出身の三三歳になるコミュニティカレッジの科学教師。人ごみのなかで彼女を見つけられると言う人がいたら、それは彼女の夫か嘘つきのどちらかだ。アンはどちらかというと小柄で、どちらかというと細身、どちらかというとぬけた感じで、どちらかというと、くすんだ茶色の前髪に顔が隠れている。要するに、どちらかというと、いかにもコミュニティカレッジの科学教師風だ。誰かが号砲を放つまでは。

<中略>

ある土曜日、アンは早起きして二〇マイルを走った。朝食でリラックスしたあと、もう一度二〇マイルを走りに出た。家の配管関連の雑用があったので、ランその二を終えると、工具箱を引っ張りだして作業にとりかかった。日が暮れる頃には、彼女はすっかり満足した。四〇マイルを走り、面倒な仕事も自力で片付けたのだ。そこでご褒美として、さらに一五マイルを自分にふるまった。

 

 

55マイルは約88キロ。趣味でマラソンの2倍を一日で走る。とんでもない人がいるもんだ。

いやあ、ハードボイルドというか、ロックンロールというか。いやあ、もうここだけでも文学的だね。

 

この本はノンフィクションの絶品だ。

この本を構成する3つの物語はどれが欠けても、この本はここまで面白いものにはならなかった。

スーパーランナー達の物語だけを並べたても、たぶん感情移入はできなかった。

 

ランニングを苦手とする著者が、悪戦苦闘をして足を痛めないランニング方法を身につけて行くさま。

その過程で一般常識とは違う本来の人間の理想的な走り方に目覚めて行く過程が、なんともいえずスリリングだ。

 

だれもが走る才能を持っている。

それは人類にもともと備わっている能力、否、正しくは人類は走る能力を身につけるために進化した。

という点に対し、人間の骨と筋肉の構成から分析し、古代人の化石から二足歩行の進化の謎に迫って行く科学ドキュメンタリーの部分も熱い。熱すぎる。

 

簡単に言って、この本で目から鱗が落ちて、ひとつはっきり判ったのは、

現代人の生活の中で決定的に欠ける養分が一つあるということだ。

それは、走ることだ。

 

人間が「走る」ことをしないというのは、猿が木に登らない、鳥が空を飛ばないことと一緒。

文明の発展によって忘れ去られそうになっているからか、

持って生まれ能力を使わないのは、そりゃストレスたまるわな。

 


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手間ひまをかけてシンプルにする [読書]

スティーブ・ジョブズ 夢と命のメッセージ (知的生きかた文庫)

スティーブ・ジョブズ 夢と命のメッセージ (知的生きかた文庫)

  • 作者:
  • 出版社/メーカー: 三笠書房
  • 発売日: 2011/11/08
  • メディア: 文庫






ジョブズを評して「何も作らなかったが、すべてを作った男」という人がいる。この人は、確かに不思議な人で、技術者でもデザイナーでもない。編集者とか映画監督ととも違う。天才は天才だろうが、レオナルド・ダ・ヴィンチのような万能の天才という訳でもない。
世の中のプロデューサーという職種が一番近いのだろうか?彼の伝記を読んでも、いったい具体的にどういう仕事ぶりだったのかが想像つかない。他人に与える影響が半端ない、というのは確かで、彼のプロデュースのもとに出来上がった製品が飛び抜けて素晴らしいというのも確か。彼がやってきた仕事は他の誰も真似できない、というのも確かだ。
彼がいなかったらAppleも, Macも、iPodも、iPhoneもiPadもなかった。コンピューター業界も、音楽業界も、電話業界も、出版業界もここまで変わることがなかった。スケールが大きすぎて、いわゆる一般的な仕事という枠に収まらない。
とはいえ、彼が一貫してやってきたのは「ものづくり」だ。彼の言葉でいうと「独創的な製品を生み出して世界を変える。」ことや、「テクノロジーとヒューマニティの橋渡しをする。」こと。

ところで、僕自身名言集はあまり読まないが、気晴らしに買った「スティーブ・ジョブズ 夢と命のメッセージ (知的生きかた文庫)」に、とても印象に残る彼の言葉があった。
彼の「ものづくり」に対する姿勢が良く分かる。

何か問題を解こうとしたときに、最初に浮かんでくるのは複雑な答えだ。ほとんどの人はそこで止まってしまう。でも、粘って問題のことを考え続けていると、タマネギの皮がどんどん剥けてきて、エレガントでシンプルな答えにたどり着くことが多いんだ。たいていの人は、そこに至るまでの時間と労力をかけない。

集中(フォーカス)というと、対象をみつけて「イエス(これだ)」ということだとみんな思っている。でも、それは全然違う。他の100件のいいアイディアにノーというのが、「フォーカスする」ということだ。しっかり吟味しないといけない。

特に後者は印象深い。
日本の家電製品はガラパゴス化と言われるほど、実に様々なバリエーションを作っている。消費者に選択の幅を与えていると言えば聞こえはいいが、逆に言えば、作り手が本当に時間をかけて吟味して、本当に良いものとは何かを徹底して考えていないだけだ。
アップルは例えばスマホはiPhoneの一種類だけだし、全体の製品のバリエーションがとても少ない。人によっては「アップルって着想とデザインがいいだけで、製品開発のコストをかけてないよね。」と思ってるかもしれない。
しかし、それは大きな勘違いだ。というのがこのジョブズの言葉で判る。
100のアイディアがあると100出すのが普通の企業だとすると、アップルは同等のアイディアを出し、それらをすべて吟味した上で、たったひとつの最も優れたものに絞っている。どちらが手間ひま、時間とコストをかけていると言えるだろうか。
毎年毎年、使うかどうかも判らない思いつきのような機能を節操なく盛り込んで「さあ選んでください!」というものづくりの姿勢が、今日の家電業界の凋落を招いていると、僕などは思えてならない。本気で製品を愛し情熱を傾けて作っているなら、覚えきれないほどのバリエーションを作る体力があるはずがない。
まあ、アップルもジョブズという強力で希有な才能をもった人がトップのワンマン体制だったから、できていたのかもしれないけど。いちユーザとしては、今後もエレガントでシンプルな製品が出てくれるのを望むばかりだ。


ルーチンワークと創造性 [読書]

Steal Like an Artist: 10 Things Nobody Told You About Being Creative

Steal Like an Artist: 10 Things Nobody Told You About Being Creative

  • 作者: Austin Kleon
  • 出版社/メーカー: Workman Pub Co
  • 発売日: 2012/02/28
  • メディア: ペーパーバック






この本の作り方がアナログで好きだ
昨今でいうライフハック的な感じで、「創造的であること」のヒントが散りばめられている。
創造的、クリエイティブとかいうと高尚なイメージがあるが、別にゲイジュツカとかアーティストとかじゃなくても、日々の生活で何か新しいことを試みたり、違う視点を探したり、自分を変えたい人にとっても考え方は学べる。難しいことは置いといて、とにかくやってみればいい、ということだ。

  「Art is theft.」

この本の冒頭で引用されているピカソの有名な言葉は、スティーブ・ジョブズもたびたび口にしていた名言だ。
ただ「真似る」と「盗む」というのはもちろん違う。この間には、本質的な部分を理解しているかどうか、という大きな違いがある。「エッセンスを盗む」というは実に相当に高等な技術だ、努力なしではできない。
でも、だれしも入り口は「真似る」から始めればいい。「真似る」=「学ぶ」とは良く言われることだ。

この本からは共感を得ることは多い。

  KEEP YOUR DAY JOB.

という章がまさにそうだ。
「好きなことをやりたい人は、夢が実現されるまでは、毎日好きなことをやっているよりは仕事を探せ。」と。
仕事は外部とのコネクションで、何かしら学ぶことは出来るし、仕事先で出逢う人間から刺激を受ける。からだ。

とかく、斬新なことや革新的なことは、自由気ままに一日中好きなことをやっている人間から生まれると思われがちだが、本当にそうだろうか?

世の中を変える革新的な理論や事業は、実は平凡な日々の仕事のルーチンワークをこなす裏で生まれている。
いまさら言うまでもなく、アインシュタインは郵便局に勤める傍ら、相対性理論を世に出した。さっき例に出したジョブズも、相方のウォズニアックもアップルを作る前は会社勤めだったし、AmazonのCEOも、スタバのCEOももとはサラリーマンだった。彼らは暇で時間があふれていたから新しいアイディアを思いついた訳ではない。

また、日常の労働が終わった後の趣味の学問から転じて、偉大な発見を成し遂げた人は何人もいる。(サミュエル・スマイルズの『自助論』にはこれでもかと引用があるし、『「E=mc2」-世界一有名な方程式の伝記』の中にも実例が出てくる。)

怠惰からは何も生まれない。という教訓ではあるが、一方でルーチンワークと創造性の関係の真をついてて面白い。

簡単に言うと、毎日決まった時間に仕事を終え、限られた時間に好きなことをやれる。ことと、一日中暇があって好きなことができる。というとを比べたら、どっちがどん欲に好きなことをやるのだろうか? ということだ。

自分を例にとってみても、例えば読みたい本があったり、考えていることを整理したいと思っていても、「よし土日を使ってやろう!」と思ったところで、いざ時間の余裕があるとさっぱりやらない。だらだら過ごしてしまう。
例外の人もいるかもしれないが、たいていの人にはこの法則が当てはまるのではなかろうか。

やりたいことはそれをやれる時間が制限されてた方が、真剣にやるし前に進む。ただし、結構重要な点がもう一個あって、この本に書いてある通りなのだが、日々の仕事が終わっても十分に気力と体力が残っていること。日々の仕事に忙殺されていたら、何もできない。


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